はじめの一歩が叩かれている
なぜ叩かれているか?
面白くないからだ。そして、昔はめちゃくちゃ面白かったからだ。
話が長くなりすぎてパターンを使い果たしてしまったのだろうか?面白い試合展開には限界がある。同じパターンを使いまわすのもダメ。サブキャラクターを主役化する試みにも成功したが、それにも限界が来た。
スラムダンクの作者が、これ以上の試合が書けないからと絶頂期で連載をやめたのは、その通りなんだろう。同じ競技の括りで何試合もと言うのは厳しいことだろうな。
能力バトル系の漫画なら、その能力によってあらたな縛りをつけれたりするけど、ある程度リアル系のスポーツ漫画ではそれもできないし。
でも、はじめの一歩は本当に面白い漫画だ(った)
練習、熱い試合、合間のほのぼのシーン、すべてが良かった。
いじめられっこの気弱な男の子、幕の内 一歩が、ボクシングを始め、努力と天性のパンチ力を武器に、強敵に立ち向かっていく。
まあベタなお話しだ。だがそれが良い。
小橋健太戦だが、これはまだ物語では序盤、一歩がプロになってから4戦目の対戦相手であり、一歩が過去の3戦をKOで勝ち抜いているため、ほんの少しだけ注目をされてきたころだ。
さて、この対戦相手の小橋クン。
スポーツ漫画では古くから数々の漫画に登場するタイプの選手で
データや研究、頭脳で戦うタイプのやつだ。
全員眼鏡をかけている天才学園は相手のデータをすべてコンピュータに入力する。コンピュータからジジジと紙が出る。勝利の確率は99.9%デス。驚く熱血学園の生徒達、「なにー!俺達の打球の飛ぶ位置に先回りして居やがる!」「フフフ、すべて計算済みですよ」「よっしゃあ!根性だ気合だ主人公パワーだ」「うわあ、そんなのデータに無い」コンピュータドカーン。の系譜
いじめられっこで、努力して頑張る一歩に読者は感情移入している。
しかし、小橋は、何も持っていない男だ。
今までの対戦相手とは違うのだ。初めての格下。
実は一歩にはボクシングの才能があった。頑丈な身体に天性のパンチ力。まっすぐに練習する真面目さも。
小橋はボクシングは大好きだが、才能がない。同じジムのボクサーにも馬鹿にされている。
こいつは俺だ。読者はどうしても小橋にも感情移入してしまうのだ。
小橋は、一歩に勝つために研究し対策を練る。
強烈なパンチ、一発もらえば即終了。反則だ。一歩はズルイ!
小橋は対策を考えながらも、そのパンチの事を考えると恐怖で足が震える。
我々読者も初めて対戦者の側から一歩を見ることになる。
タフでこちらの攻撃にはことごとく耐え、一撃必殺のこぶしを休む間も無く振り回してくる圧倒的スタミナ。たった一発貰うだけでこちらは終わりだ。
なんだあ?我らが一歩君は化け物じゃないか!
そして試合だ。
打ち合いは避け、ポイントを取り判定勝ちを狙う。
試合は小橋が狙った通りに進む。
対策のかいもあり一歩は空転する。精神をすり減らしながらも、小橋は一歩のパンチを捌いていく。不恰好ながらも軽いパンチをぺちぺち当て、相手のパンチはクリンチなどで必死にしのぐ。ボクシングはKOされなければ判定になる。ポイントは取っている。
ここまで来ると読者は小橋と一体になって話を見ている。完全に小橋サイド。
頑張れ小橋!あと少しだ!
だが、同時に読者は知っている。ここで主役たる一歩が負けるわけが無い。
このままうまくいくはずが無い。なにかある、なにかがおきてしまう。
悲しいけど。
最終ラウンドだ。崩壊は思わぬ所から始まる。
それは小橋のパンチなのだ。
主人公のデータに無い行動や、コンピューターでは予測できない友情や情熱の類ではない。自らの行動。出来すぎた展開。
小橋のパンチが一歩のあごにクリーンヒットする!まさかだ。
非力なパンチでも、あごに決まれば効くのだ。
あきらかにぐらつく対戦者(ああ主人公である一歩が、ついに対戦者扱いだ)
効いてる!倒せる!この僕が!KOできる!打ち合いに行こうとする小橋。
データに無い行動を起こしたのは、主人公ではなく、小橋のほうなのだ。
ここで小橋のトレーナーと、僕ら読者は完全にシンクロする。
いっちゃいかん小橋!!
トレーナーが叫んだ言葉と、同じ言葉を心の中で叫ぶ読者
ああダメだ。負ける。いったら負けるんだ。
試合は終わる。逆転KO負け。
あんまりいいのが入っちゃったもんだから夢みちゃいましたよ
と小橋。
あのまま打ち合いに行かなければ、おそらく勝っていただろう一歩の対戦者。
自分がきっかけで自爆するデータタイプの選手。
漫画的にも面白い例だろう。いけ好かないように描かれることが多い(例外もまた多いが)データタイプの選手だが、小橋を嫌いな人は少ないだろう。
スポーツ漫画にありがちな選手であり展開ではあるが、しっかり味付けをしなおして別の料理に仕上げてある。
長くなりすぎて、同じ展開を嫌うあまりか
こねくり回すことしか出来なくなっている
今のはじめの一歩だが
初期は過去の漫画作品をしっかりブラッシュアップしてある
超名作だ。
ちなみにこの小橋健太、のちに日本チャンピオンになる。
読者もすっかり存在を忘れた頃に。
そういうサービスもうれしかったね。
鷹村と松岡修造 ほぼ同一人物説
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